地域特産物部門 金賞
高橋牧場(えりも町)
高橋牧場の活動内容は、えりも短角牛の生産と肉販売を通して、消費者との交流や食育、地域活性化と環境保全への取り組みなど多岐にわたるが、それらが無理なく一体となって実現されているところに特徴がある。
「えりも短角牛」はかつて漁家の副業として導入されたが、輸入自由化を機に飼養農家は激減してしまった。高橋牧場では、このような短角牛の良さを生かし町の特産品として残すために、繁殖から肥育までの一貫体系による直売方式で活路を見出し、250頭を飼育、年間60~80頭を食肉として販売している。また牧場内に直売所、レストラン、宿泊施設を作り、宿泊者にはコンブ拾いや牛の飼育体験などを通じて、えりもの海や山の良さを体験してもらっている。さらに、情報発信の場としてネットや王国だよりという新聞を発行して町外からツアーや消費者を受け入れ、見学、体験に取り組んでいる。週末を中心に年間300人程度の利用がある。また、広大な牧場内の散策・案内では、自生する野の花の観察など、素晴らしい景観を活かした活動や、地域の優れた品質のものを活用した特産品開発にも取り組んでいる。
これら一連の活動からは、短角牛の自然サイクルに合った飼育方法や環境維持型生産方法の工夫など、息の長い、地に足がついた牛飼い技術がうかがわれ、さらに半農半漁だった地域の歴史と営みの文化を継承しようとする志も垣間見ることができる。
繁殖から肥育、さらに直売ネットワークという地道であるが堅実な一貫体系を構築しており、いわゆる6次産業化へのひとつの地域モデルが実現されている。そこでは、「自然食品(ホールフーズ)」の理念にも通じる販売方法の確立と食の消費者教育とが結びついているとみることができる。また、高橋牧場での民宿の併設は、牧場経営の安定化に寄与しており事業の継続性を確保すると同時に、生産現場の理解への足がかりを与えており、経営全体の鍵ともなっている部門である。さらに、いたずらに生産拡大を目指すことのない体制作りと、岩手、秋田など他の同種生産者による地域おこしのネットワークにも広く繋がって相互に協力し合う連携が生まれており、このことによって高いレベルの短角牛ブランドの構築と普及を可能にしているといえよう。
このような高橋牧場の活動は、「えりも短角牛」をとおして肉の美味しさ、食育、交流、地域の活性化に大きく貢献するものである。今後も地域活性化の典型モデルとしてその役割を大いに期待したい。
「わが村は美しく―北海道」運動 第5回コンクール表彰審査委員会
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