選考理由


人の交流部門 銅賞
北のカレー工房・きららの会(中富良野町)

 農協広域合併によって、JA中富良野のアンテナショップの施設の運営が、平成13年に地元の女性農業者に託された。「域・活きふらのネットワーク」の代表を務めていた九栗貞子氏が、中富良野生活研究会の仲間に相談して、女性農業者3名で「北のカレー工房・きららの会」を立ち上げて以来、活動が続いている。
 女性農業者の視点と感性を生かし、試行錯誤を繰り返して、おいしいカレー作りに励み、平成14年にオープンするに至ったカレー工房。審査で九栗氏の話を伺い、自らがつくった米や野菜でカレーを提供し、来店するお客様と顔の見える関係を築きたいというモチベーションが原動力となっていることが、よくわかった。材料の米と野菜はすべて、スタッフである女性農業者の農場が栽培したもので、店内には農場の名前を表示し、宅配便による野菜の発送も受けている。
 付け合せのサラダやメロンも地場産の旬のもので、それが提供できる期間だけ営業している。活動期間を6月下旬から8月下旬の2か月間に限定している点は、利益のみにこだわらずに、地域のおいしいものだけを提供したいという初志を貫いていて、評価したいと思う。観光客を中心に、毎年5000人から6000人が訪れている中でも、リピーターが増えてきているのは、中富良野の農業応援団を増加させたことでもあるので、すばらしいと思った。
 女性農業者が加工品や直売所を手掛けることは、今ではめずらしくないが、地域の方々の応援を得ながら起業することが、10年近く前にはどれほど大変なことだったか想像に難くない。これまでの活動の実績を買われ、現在、全道の女性農業者倶楽部の会長も務める九栗氏に、敬意を表したい。
 カレー工房の活動をきっかけに、農場に訪れた消費者に農産物の生育状況や栽培方法を説明したり、収穫体験をしてもらったりという、消費者との交流も深まっている。修学旅行生は、家のおみやげに野菜セットを送り、お母さんがおいしいと喜んで、注文をくれるなど、農産物の販売があらたに広がってきている。
 昼食のお客様が帰ったころに、地元の方々がゆっくりお茶を飲みに来たり、ジャズのライブコンサートが行われたりなど、交流の場として地域の重要な拠点となっているのは、大きな成果だろう。また、カレールーをテイクアウトして家で食べたいという地域の方に、200円で提供しているという。
 九栗氏と共に頑張ってきた若い世代のスタッフが、活動の方針を維持しつつ、活気ある地域活動として運営し続けていくことが、今後の課題だろうと思う。ここのカレーが一番おいしいと、お鍋を持って買いに来る地域のお年寄りのためにも、中富良野の農業の振興の中心となって頑張っていただくことを期待している。

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「わが村は美しく―北海道」運動 第5回コンクール表彰審査委員会