選考理由


人の交流部門 銀賞
森の学校

 『森の学校』は、北オホーツクの町、枝幸町で1997年から行われている子供たちを対象とした地域独自の実践的な環境教育活動である。枝幸町の自然を素材にして、子供たちと楽しみながら地域環境について学習しようという素朴な発想から始まったこの活動はすでに8年目を過ぎ、着実に成果を生みつつある。
 この活動の背景には、一次産業が衰退の危機にさらされている状況の中で、枝幸町の自然の価値や自然の循環システムを再認識して、枝幸町の基幹産業である一次産業と自然環境との調和をめざしたいという村山裕校長の強い想い(理念)が、多くの人の共感を呼んだものと思われる。この活動に積極的に子供を参加させている親の存在や、その活動を支援しようと集まってくるボランティアスタッフの情熱をみると、この活動の理念がしっかりしたものであることが理解できる。
 『森の学校』は季節ごと年4回、「森」「川」「海」という学習テーマのもとで、毎年40〜50人の子供たちを募集し、月1〜2回程度行われるプログラムに子供たちが自由に参加するシステムである。その内容はかなりアクティブなもので当然ながら危険もつきまとう。それを森の学校ではしっかりとした技術に裏付けされながら、平然とこなしているところがすばらしい。
 すなわち、このような体験学習は、リスク管理のことなどを考えると学校教育ではなかなかできるものではない。それをこの「森の学校」が見事にクリアしているところがすばらしい。それを可能にしているのが優秀なスタッフの存在である。その中には獣医さん、保健婦さんなどもおり、どんな状況にでも対応できるスタッフがいることが強みである。さらに、一般から募集したボランティアスタッフを含めると十数名のスタッフがこの『森の学校』を支えており、この部分はまさに地域とのつながりという点で大きく評価したい。
 また、これらがうまく機能するという意味で、『森の学校』の全体を統括している人的な仕組みも評価したい。すなわち、すぐれたリーダーとそれを取り仕切る事務局長、さらに優秀なスタッフという組織構造がうまく働いている。子供たちの心の荒廃が指摘されている現代社会にあって、『森の学校』の地道な活動は、地域で子供を育てる具体的な実践例として注目される。学校教育との補完関係を保ちながら、より地域に密着した実践的な教育が実現されることが望まれる。
 近い将来、その教え子たちが新しい地域の資源となって戻ってくる日が来ることを思うと大きな楽しみでもある。そのためにも、『森の学校』の活動が、今後も継続的に行われ、発展していくことを期待してやまない。

2004年12月
「わが村は美しく―北海道」運動 第2回コンクール表彰審査委員会