選考理由


人の交流部門 特別賞
羽幌町「寺小屋塾」

 平成9年11人の仲間が集まって始めた「寺小屋塾」、その年、呼び掛けで集まった子どもたちは36名。今、その仲間は64名と増えて、7年たった今でも継続している。
 近年の子ども達が、戸外で遊ぶことも少なく、生活が荒れたり、社会性が欠けてきていることなどを危惧した仲間たちが、3年間、話し合いを続けてきた。このままではいけないという思いで、定年退職した高齢者たちが、それぞれの得意分野を生かし、子供のときから「汗を流し、ものをつくる喜びや、自然の中で遊び、素晴らしさを知る」事を目的に、野外での体験活動を実施指導してきた取り組みである。メンバーは、中学校の校長先生、消防署員、開発、町職員、営林署、農家などの定年退職者たちが中心となっている。様々な経験と知恵が豊富で、多彩な活動内容となっていることが、年間を通して活動し、7年間も持続していることに繋がっていることなども評価される。
 高齢者と子どもたちとのふれあい、卒業した子どもたちがアドバイザーで戻ってきて、次の子どもたちとふれあう、というふうに異世代交流も行われている。 そのことで、責任感・辛抱強さ・積極性も育ってきているという。地域性を活かし自然体験・農業体験・漁業体験など、専門的なアドバイスなども豊富であることから、自然への関心も高くなり、地域の人々の参加も広がっている。
 こういう活動の持続で一番難しい、運営資金の調達も、各産業界の協力で、スムーズに行われているように見受けられる。各基金の助成や企業の賞金・基金をうまく活用していることで、自主性に基づいた活動で、地域に根差した堅実な取り組みとなっている。自らも楽しみながら、無理せず活動していることが基本となっている。町との連携もひろがり、バスの援助を受けたり、幼稚園へ出向き「昔遊び」などを提供したりと地域の理解も進んでいる。次の広がりとして、町から700mくらい離れた空き地を、ビオトープ計画の実現に向け、羽幌高校ネイチャークラブの高校生と共に参加しているなど、体験教育から始まった地道な活動が認められた。この取り組みは今後も注目していきたい。
 道内各地で、地域で取り組まれている野外教育などが注目されている。その中でも、この「寺小屋塾」は、高齢者の人たちと子どもたちの関係が、自然な形で広がってきて町ぐるみで参加するということで評価されている。高齢者の知恵を生かすことなどで、生きがい作りにもつながっていることが今後とも注目されるところだろう。メンバーに女性がいないということは少し気がかりなのだが、参加した子ども達の母親や祖母もまた、アドバイザーとして参加するなどでカバーしているようだ。これからは、この地域の魅力が、更に他の地域にも広がっていくような取り組みに期待したいと思う。

2004年12月
「わが村は美しく―北海道」運動 第2回コンクール表彰審査委員会