人の交流部門 銅賞
特定非営利活動法人自然体験村虫夢ところ昆虫の家
近年、子どもが人間として育っていないと危惧する声が大きい。自衛隊を退職後、子どもの教育に関わる出版物を扱う仕事をしていた故滝沢始氏も、こうした異変に気づいた者の一人である。子どもに自然体験の場を提供し、住民とのふれあいや、自然に対する感動や神秘性を体得してもらい、青少年の健全育成に努めたいと考えた。平成元年、常呂町の山奥にある元小学校の廃舎を購入し体験教育の場とすべく自力で改修を始める。その原形が復元し「虫の家」として運営を始めた矢先に校舎で急逝する。
ここよりさらに奥に町水道の水源施設があり、この管理のために毎日滝沢氏の施設前を通り、氏の活動を見守り、時には手伝ってきた町職員らが、氏の亡き後この活動を引き継いだ。会員約350名、サポート会費5千円を徴収し、かつボランティアを募ってその後の虫の家の運営に当たる。
主な活動は地域の子ども達に月1回、1泊の週末自然体験を行うほか、年1回13泊の自然体験村を全国の子どもらを対象に行う。後者は文部科学省から子ども夢基金助成事業の助成を受けているが、大半は学生ボランティアや講師陣の謝金、旅費などに費やされる。参加した子ども達がどこへ行っても立派に生活していける力を身につけることが目的となっているが、学生ボランティアの人間形成にも一役買っている。参加した子どもや親からの感想文には感謝の気持ちがいっぱい込められ、子どもの成長のみならず親も強く影響を受けていることが感じられる。
施設は旧校舎や跡地を利用した会員らのすべて手づくりによるのもので、中でも故滝沢氏の友人が寄贈し管理する昆虫標本室は本格的で、施設全体の中でもとりわけ異彩を放ち「虫の家」の名を一層際立たせている。この他列車を利用した宿泊施設やバンガロー群、ホタルの水路、池、五右衛門風呂、虫の家の森などが会員や子どもらの手によってきれいに美しく管理されている。
近年子どもの異変に気づいている者は多いが、その対策に具体的に動き出すものが少ない中で,故滝沢氏やその意思を継いだ会員やボランテアの活動には高く評価されるべきものがある。別けても町水道水源の管理にいまも勤め、ここの旧教員住宅を住居とし、奥様と共に子供たちのお世話に当たり、子どもたちからちょっぴりこわい「赤おじさん」と親しまれている先の町職員の情熱には頭の下がる思いがする。
今後は全道各地で芽生えつつある、こうした「子どもが育つ環境の場づくり」のネットワーク化にも目を向けてもらいたいと考えている。
2004年12月
「わが村は美しく―北海道」運動 第2回コンクール表彰審査委員会
|