選考理由


人の交流部門 特別賞
置戸町商工会青年部

 昔の人はよく一寸引という言葉を使った。「太刀打ち出来ないような重いものを動かすには、一度に全部動かすのではなく、時間をかけて一寸ずつ動かせ。そうすりゃそのうちにいつかは動く」という意味である。
 木遣り音頭でくり広げられる丸太の積み上げ作業は、まさにこの一寸引きの繰り返しである。ほんの僅かずつの丸太の動きでも、音頭を終える頃には丸太が最上段まで積み上げられている。人間ばん馬が渾身の力を込めて最後の障害を乗り越える時も同じである。僅か2〜3cmの動き、その積み重ねが障害を乗り越えさせる。
 昔は、農業も林業も炭鉱も全て人間の力と畜力でこなしてきた。人間自身が持っているエネルギ−を使ってきたのである。人間が渾身の力を込めた仕草は美しい。相撲や人間ばん馬が感動を呼ぶのも、そこに共通点があるからではないかと思われる。
現代社会は、体を動かすことを嫌ったり卑下することが多いが、要するに人間が横着になっているのである。この横着さが依存症等今日の社会的問題の根底にある。このことを考えると置戸人間ばん馬は、伝統文化の継承に37年間も努力してきたこともさることながら、“横着から脱する為人間自身が本来持っているエネルギ−を見直そう、体をもっと使おう”ということを、このイベントの感動を通じて社会に伝え続けているように思えてならず、今日的課題を表現している点特に高い評価が与えられる。だから、重くて引ける人が少ないというにも関わらず、今なお過酷なレ−スにこだわりを持ち続けるのであり、出場者や観客からも支持されるのであろう。
 置戸町は戦後一貫して社会教育を中心とした町づくりを行ってきた。昭和21年、戦後の混沌とした社会の中で置戸村青年会が結成され、夜学会や運動会さらには青年読書会が結成された。こうした伝統を受け継いだ青年部は、昭和51年の夏に酒を飲みながら今後の祭りをどうしたら良いか、朝まで小学校跡にて語り合う。置戸町は木材の町であり、木をテ−マに祭りはできないかとなった。こうした地道な社会教育から人間ばん馬や置戸クラフトが生まれ、さらには昭和51年の図書貸出率全国一や、全日本綱引き選手権大会優勝などに結びついていく。
 青年団同志の交流、青年と村・村民との交流、こうした人と人との交流が、置戸町と全国を結ぶ交流にまで発展させた。イベント的要素が強く見えるが、根底には人と人との交流や社会教育といった人づくりが脈々と息づいている。賞賛されてやまないものがあり今後のさらなる発展が期待されてならない。

2004年12月
「わが村は美しく―北海道」運動 第2回コンクール表彰審査委員会