選考理由


人の交流部門 銅賞
士幌なまくら会

 教育の現場では子供たちに生きる力を養う必要性が叫ばれているが、その具体的な方法はさまざまな分野で試行錯誤しながら進められている。
 これらの中でも特に注目される取組の一つが自然体験、環境教育、野外教育の分野であろう。自然の厳しさ、優しさを体で体験すること、また便利な日常生活をしばし離れ、自分たちで創意工夫し、仲間と協力しながら物事に取り組んでいくことは、現代の家庭では学ぶ機会が少ない。
 このような状況を考えると、士幌なまくら会が長年にわたって子供たちの自然体験に取り組んできたことは、価値あることと言える。しかも、一過性のイベント的なものではなく、毎月定期的に開催しているため、その体験が参加した子供たちの身になっていると思われる。田舎に住んでいても身近な自然にふれる機会がない子供たちが増えているが、このような体験を子供の時にしておくと、故郷の魅力を知り愛着をしっかりと持った大人に育つ。また、卒業生がこの活動を支援したり、全道各地でその芽を広げるような動きがあることも意義がある。自然エネルギーの利用などの環境教育にも取り組んでいるが、地球温暖化が大きな問題となっている今、楽しく子供たちにこの問題を伝えることも大切な活動である。
 会には昆虫や植物などさまざまな専門・得意分野を持つ大人がボランティアで関わっており、時には酒を酌み交わしながら楽しそうに交流する様子も伝わってきた。 「どなたでも歓迎」と会の憲法にあるように、交流の輪は何らかの形で活動に参加した多くの人に広がっている。特にスキー横断フェアで取材に入ったNHKカメラマン(雲仙普賢岳の取材中に殉職)との交流は深く、遺作の作品展を全国で開催し、感動を与えている。
 これらの交流には魅力的な山小屋が拠点としてあることが大変役立っており、体験のためのフィールドとしてその土地を購入し、山小屋まで建設した事務局長原さんの熱意と人柄が感じられた。このように大変意義ある活動をしているものの、気負いはなく、「なまくら」の名のとおりほんわかとしたムードを感じさせる会であり、それも魅力の一つとなっている。
 自然体験は小さいほど動物的感覚で体の中に残っていく。今後はより小さい子供たち(例えば幼稚園やそれ以下、親子参加でもいいと思う)の自然体験にもぜひチャレンジしてもらいたい。

2004年12月
「わが村は美しく―北海道」運動 第2回コンクール表彰審査委員会