人の交流部門 銀賞
標津エコ・ツ−リズム推進連絡協議会
近年、農村で過ごし農業を体験するなどのグリーンツーリズムはずい分盛んになり、さまざまな取組が行われているが、マリンツーリズムは今一つ進まないのが現状である。漁業は農業ほど切実に消費者と顔が見える関係=交流を求めていないと言える(農業もひと昔前まではそのような状況であった)。また、実際に体験をする際にも海での作業は生命の危険を伴うことや天候に大きく左右されることなどから、簡単にできるものではないという側面もある。
標津のエコツーリズムは、サケをはじめとする水産業を地域の財産ととらえ、幅広く活用したものである。上記のような現状を考えると、道内では先駆的な取組であり、オリジナル性も高い。まず漁師が自ら仕事の現場を開放して消費者に見て貰うということが画期的である。多くの場合、漁師は消費者が仕事の現場に来るのは邪魔なだけで意味がないと思っている。しかし、標津の実践は、安全・安心を直接消費者にアピールすることによって標津ブランドを確立し、さらに住民や生産者が地域の産業に誇りと自信を持つという結果をもたらした。このことが他の水産業のマチに与える影響は大きい。
水産業を核とした活動ではあるが、漁師だけでなく、さまざまな住民が関わっている点も評価できる。例えば、シルバー世代が町民観光ガイドとして活躍し、生きがいとなっている。シルバー世代が修学旅行生と交流するのは、これからの少子高齢化社会において重要である。また、修学旅行の受け入れの際に小規模な宿しかないという不利を逆手に取り、分宿によって家庭的なもてなしを実現し、本来ライバルである宿同士が手を取り合って標津全体のもてなしの質を向上させている点も評価できる。
町内を流れる忠類川では、サーモンフィッシング(カラフトマス等を調査するために捕獲)が全国ではじめて行われ、まさに先駆者の役割を果たした。前例のない取組には数々の困難があったと思われるが、それを克服し、今ではシーズンになると全国から多くの釣り人が訪れている。また、川の維持・管理などに地元のスポーツフィッシング協会のメンバーがボランティアとして活躍している。地元住民の積極的な参加のもとで遊漁を地域振興に活用したモデルとして注目され、ここに地域振興の新たな可能性も感じられる。
このようにさまざまな地域住民が一体となってマチを盛り上げてきた標津のエコツーリズムは高く評価できる。今後、北海道の一大産業である水産業を生かしたツーリズムを実践してきたリーダーとして他地域にも影響を与え広めていくことを望む。
2004年12月
「わが村は美しく―北海道」運動 第2回コンクール表彰審査委員会
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