選考理由


人の交流部門 銅賞
酪農家集団 AB−MOBIT

 非常にユニークでオリジナル性が高い活動である。フットパス自体は最近道内でも各地でその動きがあるが、酪農家が自分たちの農地をつないでパスを造るという発想がまずユニークである。これは、酪農家たちが当たり前に眺めてきた身近な風景に価値を見出した点でも評価される。
 さらに、学生たちを交えた体験型ワークショップを行い、パスを造る過程そのものを交流事業にしてしまうあたりに、若い感性が感じられる。ワークショップに参加する学生たちは、長期滞在になることもあり、ここでの交流は深く、また写真などの記録から楽しんでいる様子も感じられる。今後、パスができてからも彼らは応援団となってくれる存在である。
 高野ランドスケープ高野文彰社長がボランティアで協力していることはこの活動に大きく貢献しているが、それもメンバーの熱意に動かされたことによると思われ、自分たちの住んでいる地域をより元気にしたいという熱い思いの賜物と感じた。
 事前に綿密に各地の視察を行い、自分たちのやりたいことを明確にしてきた過程も有効であった。また、そばオーナー制度などを通して地元にサポーターズクラブができたり、パスの出発点が旧標津線であるためJRにも諸々の協力をとりつけているが、枠にとらわれない行動力で地域の人々を巻き込んでいる点も評価される。
 この活動ではフットパスをより活用しやすく魅力的なものにするため、キャンプ場、ログハウス、そば打ち体験施設、牧場直営のソフトクリーム屋など、宿泊・体験・交流のためのさまざまな施設の整備が進んでいる。これらの建設には助成金も使っているが、それに頼らず、ワークショップに参加した学生たちと一緒に手造りしたりメンバーが資金を出し合って造っているものが多い。投資した分の採算がとれるかという問題はあるかもしれないが、経済面だけで評価するのではなく、ここで生まれる交流や酪農家としての誇り、地域への愛着はお金で換算できない効果があると思われる。
 パスや施設は現在建設中な部分が多く、観光客の訪れも来年以降が本番となることであろう。今後の北海道観光においてフットパスは新たな潮流を生む可能性が高く、酪農家集団AB−MOBITがここに果たす役割も大きい。完成した(またはずっと造り続けるのでもいいかもしれないが)施設を活用した新たな交流を促進させ、さらに上の賞を狙ってもらいたい。この際、地元住民や酪農家により広く関わってもらうことも課題となるが、AB−MOBITならではの更なるユニークな取組が生まれることを期待する。 

2004年12月
「わが村は美しく―北海道」運動 第2回コンクール表彰審査委員会